
着物を眺めていると、光の角度により輝きが変わる金箔や銀箔の文様に目を奪われたことはありませんか?
「この輝きはどうやって表現されているの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
着物の文様には、さまざまな加飾技法が使われています。
その中で、最も軽やかで上品な輝きを生み出しているのが、「摺箔(すりはく)」です。
本記事では、摺箔とはどのような技法なのか、その特徴や製作工程について解説します。
これを読めば、摺箔の仕組みがわかり、着物の美しさをより深く味わえるようになりますよ。
- 日本の伝統的な加飾技法、「摺箔」について知りたい方
- 着物について正しい知識を身につけたい方
- 着物に興味がある方
目次
日本の伝統美を支える加飾技法「摺箔(すりはく)」とは?

摺箔とは、着物や帯の加飾技法の一つで、金や銀の極めて薄い箔を、布地に摺りつけて文様を表現する日本の伝統的な技法です。
その起源は、平安時代にまでさかのぼり、能装束や高貴な衣装、絹織物などに広く用いられてきました。
摺箔の「摺(すり)」には、「摺りつける」「こすりつける」という意味があります。
箔をそのまま貼り付ける「貼箔(はりはく)」とは異なり、型紙を使って箔を布地に摺り込むことがこの技法の特徴です。
それにより、箔の輝きが布と一体化した、派手すぎない上品な輝きが生まれます。
金銀の箔が織りなす柔らかな光沢は、まさに日本の「さりげない美」の象徴といえるでしょう。
摺箔の特徴と魅力

摺箔の魅力は、金銀の輝きが華やかでありながら、布地の風合いを損なわない点にあります。
ここでは、着物の美しさを支える「摺箔の特徴」を3つ紹介します。
光の角度で変わる強い輝き
摺箔の最大の特徴は、金銀の箔が布地に均一な面として定着することです。
そのため、表面に凹凸のない自然な輝きが生まれます。
光の当たる角度が変わることで、箔の反射が変化し、まるで文様が動いているかのように見せてくれます。
端正さの中に、華やかさを宿した摺箔ならではの光沢は、格式の高い装いにぴったりですよ。
軽やかで柔らかな仕上がり

摺箔は、布地の風合いを損なわない軽やかで柔らかな仕上がりが特徴です。
これは、摺箔に用いられている箔が極めて薄いことに加えて、もち米を主原料とした天然の糊を使用しているためです。
この糊は、箔を布地にしっかりと定着させながらも、布地の持つ本来のしなやかさを保つことができます。
摺箔が施された着物は、見た目の豪華さと着心地の良さを兼ね備えていますよ。
手仕事ならではの温もり

摺箔の工程はすべて、熟練した職人の手作業により行われます。
箔の扱いは非常に繊細で、わずかなズレや力加減、湿度や温度の違いで仕上がりが大きく変わります。
そのため、同じ模様でも一つ一つに職人の個性と温もりが宿るのです。
量産では決して生み出せない、手仕事ならではの美がここにあります。
摺箔の技法を支える緻密な工程

摺箔の完成には、機械では代替できない、いくつもの緻密な工程があります。
ここでは、一般的な「摺箔の制作工程」について紹介します。
1. 型紙の作成
まず、表現したい模様が正確に写された型紙を作ります。
この型紙は、和紙を何枚も重ねたものなどを使い、職人が手作業で彫り上げます。
型紙の精度が摺箔の美しさを決める重要なカギとなるため、職人の技術が最も問われる工程といえるでしょう。
2. 糊置き
作成した型紙を用いて、布地にもち米を主原料とした糊を置いていきます。
この糊が、箔を定着させる役割を担います。
糊の厚みや粘土により箔の密着具合や光沢の出方が変わるため、糊が均一かつ正確な位置に置かれるよう、細心の注意が必要です。
3. 箔摺り
糊を置いた布地に、金や銀の箔をのせて専用の刷毛でやさしく摺りつけます。
力加減が強すぎると箔がはがれ、弱すぎると模様が転写されません。
まさに、職人の感覚と経験がものをいう、核心の工程となります。
4. 乾燥・仕上げ
最後に、定着した箔を安定させるための工程です。
布地を乾燥させて、必要に応じて熱処理や蒸しなどの定着処理を施します。
これにより、箔がはがれにくく、耐久性のある摺箔の着物が完成します。
まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回は、日本の伝統的な加飾技法「摺箔」について解説しました。
摺箔の仕組みを知ることで、着物の奥深さをより一層楽しめるようになりますよ。
本記事が、より快適な着物ライフの参考になれば幸いです。
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